目が紫外線ダメージを受けると、肌にメラニンが生成される

目から入った紫外線で角膜が炎症を起こし、メラノサイト(メラニン産生細胞)を
刺激するホルモンが生成され、肌のメラニンを作り出してしまう!

まずは『目肌焼け』が起きるメカニズムをお教えください。

目に紫外線が当たると、角膜が炎症を起こします。目の周りに分布する三叉神経が角膜の炎症反応をキャッチすると、ストレス情報を脳の視床下部へ送り、ストレス応答反応が発生します。

この応答反応によって、体の調整機能を刺激する副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)や、メラニンの生成を促すメラノサイト刺激ホルモン(MSH)が生じます。

これらのホルモンが、脳から血中へ分泌され、全身のメラノサイト(メラニン産生細胞)を刺激するので、紫外線照射されていない肌でもメラニンが作り出されてしまうのです。

『目肌焼け』のメカニズム

目から入った紫外線も日焼けの原因となる。

図解:『目肌焼け』のメカニズム

簡単にいうと、目から入った紫外線が、角膜炎症を起こし、数々のホルモンの生成から、メラニン産生細胞であるメラノサイトを刺激して、目以外の肌にもメラニンを生成させてしまうのですね。

つまり、目への紫外線ダメージを避けることが、大人の女性のキレイ肌につながるのですね。

目肌焼けは、サンゴが日焼け止め物質を
作ることから解明された

紫外線が多い海の魚の目には日焼け止め物質が多く、
紫外線が少なくて汚れた海の魚には日焼け止め物質が少ない!

井上先生が『目肌焼け』に気付いたきっかけは何だったのでしょうか?

オーストラリアのグレートバリアーリーフで行っていた「サンゴはなぜ日焼けしないか?」という研究です。この研究で、「サンゴが紫外線を吸収する日焼け止め物質(紫外線防御分子)を大量に生成していること」「サンゴが作った日焼け止め物質が、サンゴ礁にいる魚の目(角膜、虹彩、レンズ)に高濃度で濃縮されてたくさん存在すること」を発見しました。

サンゴ:イメージ

サンゴが日焼け止め物質を作り出していて、サンゴ礁にいる魚の目にまで影響を与えていたとは初耳でした。

そうなのですよ。そのことから、「紫外線が多い海の魚の目には日焼け止め物質が多く、紫外線が少なくて汚れた瀬戸内海などの魚には日焼け止め物質が少ないこと」に気付き、「日焼け止め物質を持たない動物は、目からも日焼けすること」を実験で証明したのです。

目肌焼けのメカニズムを証明

「目の炎症→脳がストレスを受け取り、肌でのメラニン生成を促すホルモンを分泌
→肌でメラニンを生成」というメカニズムが重要!

研究:イメージ

日焼け止め物質を持たない動物が『目肌焼け』を起こすという実証実験は、どのように行ったのですか?

アルミホイルでマウスの目や耳を覆いながら、紫外線を目だけ、あるいは耳だけに照射し、耳の皮膚のメラニン生成量を比較しました。

その結果、目を紫外線照射しただけで、照射されていない耳にもメラニンが生成されることがわかったのです。また、目に紫外線を照射すると、メラノサイト刺激ホルモンが脳から血中に分泌されることから、

「目の炎症→脳がストレスを受け取り、肌でのメラニン生成を促すホルモンを分泌→肌でメラニンを生成」

というメカニズムを証明することができました。

日常的に紫外線から目を守る必要がある

サングラスや日傘や帽子などで、日常的に『目肌焼け』を予防しましょう!

『目肌焼け』を解明するときに、苦心されたことがあれば教えてください。

医学研究では、「人間でも同じことが確認されることで完全な証明」となるのですが、大学や学会の倫理委員会では「人の目に紫外線を照射すること」が禁じられています。人間とマウスのメラニン生成のメカニズムは全く同じですが、目への紫外線照射以外の方法で、人間でも『目肌焼け』が起こることを証明するデータを取る必要があったのです。

そのため、オゾンホールに近いメルボルンまで遠征して、サングラスや特殊なフロントグラス装備車を使用したとき・使用しなかったときで、ストレス強度や血液成分の変化を比較・解析しなくてはなりませんでした。

サングラス:イメージ

数々の研究を通じて『目肌焼け』は実証されたのですね。最後に井上先生が考える『目肌焼け』の対策方法をお教えください。

紫外線が強い場所や季節には肌を保護するのみならず、日陰を歩いたり、日傘や帽子、サングラスなどで、目も保護することが大切です。「日焼け止めを塗っているから大丈夫」と楽観せず、日常的に紫外線から目を守ることを意識しましょう。

写真:井上正康

大阪市立大学医学部名誉教授/医学博士

井上正康

1945年岡山大学医学部卒業、インドペルシャ湾航路船医、熊本大学助教授(生化学)、米国アインシュタイン医科大学客員教授(肝臓病学)、米国タフツ大学医学部客員教授(分子生理学)、大阪市立大学医学部教授(分子病態学)、宮城大学副学長(震災復興担当)、京都府立大学医学部客員教授(内科学)、大阪市立大学特任教授(脳科学)、(株)キリン堂HD取締役、大阪市立大学名誉教授を歴任。健康科学研究所所長。